異世界餌屋日記6.5話:自警団の仕事

「帰ったぞー」

自警団隊舎のソファでくつろいでいると玄関の扉が開きそんな声が聞こえて来る。

 

「お帰りなさいませ、タイガー様」

「おお、お疲れっすタイガーさん」

その声に続いてベルさんと私がその声に反応する。

 

「お、日向もいたのか。今回は氷室は一緒じゃなかったのか」

「毎回あの熱いんだか寒いんだか分からない雪女と一緒じゃないですよ…」

彼はディープ・タイガー、シャチの頭をした獣人でこのエリア34地区自警団の副団長、つまりNo.2だ。

上はシューティングベスト(というやつらしい)を着ただけという筋肉質の身体を見せつける格好で下はチェーンのついた黒っぽいジーパン、背中には獲物の大きな槍を背負っている

 

「おお、ディープ帰ってきたのか。成果はどうじゃった?」

「見ての通りだ」

隊舎の奧にいたソルベラートも近寄ってきて話かける。

そしてタイガーさんはソルベラートの質問に答えながら手に持っていた革袋を掲げる。

 

「今回は小っちゃい『現象』ばかりだったよ。まぁ、そこそこの稼ぎにはなったよ」

「それでも『現象核』てげ取れてるじゃないですか、良いなぁ。」

自警団の活動は主に2種類だ。1つは犯罪者の確保や町にたむろする問題児達の排除などの治安維持。

もう1つが、今回タイガーさんがやってきた『現象』の退治および『現象核』の確保だ。

 

現象という物は太陽が沈み夜になったら場所を問わずいきなり表れる謎の生物だ。色は身体全体が藍色で所どころラメのようにキラキラ光る。姿形は様々で、身体の小さい物は小鳥やコウモリ、トカゲ等、大きい物などクマや狼などの姿になる物もいる。

基本的に小型の物は無害だが、大型の物は人を襲う事もあるという。

 

そしてこの現象を倒すと落とす物が現象核だ。そして大きい現象を倒すほど大きな現象核が取れるのだ。

この現象核は長時間持つ燃料や武器や道具の素材になっており国の貴重な戦略物質。私が元居た世界の原油のような物なのだろう。

そして現象核は国が量に応じてそれなりの額で買い取ってくれるのだ。

 

勿論もう1つの犯罪者の確保の方でも手柄に応じて報奨金が出るのだが、基本的に現象核の確保の方が実入りが良い。

だから私も現象退治には参加したいのだが、私が扱う結界魔法と氷魔法は戦闘では『捕獲』や『補助』には向くが『撃退』には少々不向きな方向に成長させてしまっているので中々に難しいのだ。

それに

 

「日向、お前だって格闘戦がちっとは出来るようになればこの位簡単だぞ?」

「そう簡単に強くなれるんなら苦労してないっすよ」

そう、私は格闘センスがほとんどないのである。勿論、ちゃんと鍛えればそれなりにはなるのだろうが中々そこまで時間が取れないのが現状だ。

 

そんな話をしているとふと気づく。

「ってあれ?そういえば稲葉隊長と一緒じゃなかったのでは?」

「そういえばそうですね。稲葉様は今どちらに?」

一緒に見廻りに出ていたはずのエリア34自警団団長、稲葉・A・剛志の姿がない。

ベルさんも私に続いて聞く

 

「あぁ、おやっさんは今は想い人の所だよ、ハハハハハ。」

タイガーさんが笑いながら答える。

「あ…なるほど。じゃあ今日は…」

「『わふう』には行く事は出来んのう」

私とソルベラートがうんうんと頷き合う。

 

「そういう訳だ。で、お前らまだ夜は何も食ってないだろ?今日はここで盛り上がろうぜ。ベル、なんか軽く摘まめる物作ってくれ!」

「かしこまりましたタイガー様」

そういって隊舎のキッチンにベルさんが消えていく。

 

今夜は少し長くなりそうだ。