異世界餌屋2話:スライムは艶が命

 

えーと、赤向けやつの在庫は…まだあるな。緑向けも…ある。」

「青向け…はこの前ので最後か、発注しないとなぁ。」

独り言を言いながらガサガサと在庫を確認する。

 

今在庫を確認しているのは魔物のスライムのための餌だ。もといた世界ではゲームなどで所謂雑魚キャラとしての架空の存在だが、この世界では現実に存在している。

この世界ではスライムも2種類おり、大きさも様々で本能のまま動くタイプと人の形・大きさを作っていて(なお下半身は足ではなくゲル状で滑って移動する)知性があり会話も出来、普通に町でいち住民として暮らしているタイプがいる。

 

強さは前者のほうは私がゲームで知っている程度の強さだ。私でも1対1ならそこら辺の大きめの木の棒で叩くだけの攻撃で倒せるほどだ。

しかし、後者は違う。普通に魔法も使ってくるし、軟体という体を活かして様々な攻撃を仕掛けて来る。様々な人種がいるこの世界でも基礎戦闘能力は最強クラスと言われるほどだ。そのためこの国の軍の中でも上級の役職にも彼らは結構いる。

 

勿論『飼育』されているのは前者のほうだ。後者の飼育は一般人の人身売買となり原則犯罪となる。

 

ガチャ。

と、なんやかんやしていたら店の扉の開く音と

「すいません、スライムの餌飼いに来たんですけど~。」

というお客の注文の言葉が入る。

 

「いらっしゃい、色は?」

「それが赤色なんです。中々売ってなくて…」

「おお、珍しい色手に入れましたなぁ」

 

私が色を聞くと客も答える。

この色とはスライムの色の事だ。

スライムには何種類かの色がある。よく見かけるのが緑色、そしてその次が青、そして一番少ないのが赤色なのだ。

そして、その赤色は緑と青に比べ極端に少ない。だからこそ少し驚く。

 

そしてなぜ色を聞いたかだが、スライムの色によってお勧めの餌が違うのだ。

あくまでオススメなのでスライム用の餌であればスライムもなんでも食べるし健康に育てられるのですが、色によって専用の餌がありその色専用の餌を使う事で色が濃くなり艶も出るのだ。

そして、せっかくなら色を綺麗に育てたいと思うのが人の性である。

 

スライムの餌は粉末状でコルクで蓋のされたビンに入れて売られている。

この粉末を適量の水と混ぜる事でゲル状になり、それを与えるのだ。

 

1瓶の価格は青・緑向けが50ダン、赤向けが60ダンと少し高い。これは赤系のスライム自体が少し珍しくそんなに売れないためである。

ちなみにこのダン通貨、どれ位の価値かというと私がもといた世界で使っていた『円』の10倍程度の価値らしい。つまり、1円=10ダンという感じだ。

 

「いや~、やっと赤用の餌見つけました。ありがとうございます。」

そう言ってお客はその赤用の餌を買って店を離ていった。

スライムは魔物も中でも飼育数が多く、その餌を売る側としてもメインの収入源の1つになっている事も多い。うちの店もその一つだ。

だが、赤系を扱っている店は意外と少ない。今後あのお客がリピーターになってくれればありがたいのだが…。

 

「あ、赤も少なくなってきたな。青向けと一緒にいくらか発注しとくか。」

そう考えながらある程度在庫確認をひと段落させ、店のイスに座りすこし前に買ってきた雑誌に目を向ける。

 

『新色発見か!?幻のピンク色のスライムを追う!!』

雑誌の表紙にでかでかとそのように書かれている。

 

現在、野生個体で先ほどの3色しか見つかっていない。

そして様々な冒険者が新たな色の野生個体を探そうと必死になっているのだ。しかし、今のところは成果なし。

この雑誌のピンク色のスライムも弱って色が薄くなった赤色のスライムを誰かが見間違え、それを雑誌記者が雑誌を売るためにその話に尾ひれを付けたとかが真実だろう。

世の中本当に幻の物はそう簡単に見つからない物だ。

 

しかし実際いたら餌はどうなるのだろうか。赤向けの餌で代用できるのか?いや、もしかしたら特殊な環境が必要かもしれない。そもそも一般市民の手に届く価値になるまでどれ程かかるのか。

 

そんなことを考えながら今日も新たなお客が来るまで時間が過ぎてゆく。