異世界餌屋3話:餌屋と魔法と冷凍ネズミ…あと雪女

ガッチャーン!!!!

 

店の扉が大きな音を立て勢いよく、いや良すぎる勢いで開く。

そして

「よーっす!!やってるー!?」

活気の良い若い女の子の声が飛び込んでくる。

 

勢いよく開いた扉でほぼ察しはついていたが、声を聴いて確定である。

「…何?氷室さん」

声の主に半ば溜息交じりで話しかける。うちの店に来るヤツでこんな勢いで、しかもこんなにうるさいヤツは他にいない。

「いやー、見廻りついでに同じ自警団仲間にお使い頼まれてねぇ~!!」

 

無駄にでかい声量で声量返答をしたこの女性は『氷室 美華』。ぱっと見は私達人間と同じだが実は『雪女』、つまり妖怪だ。

この雪女族の女性の特徴だが、肌は白く髪は青~水色っぽいしなやかな長い髪でいつも和服を着て大和撫子といった感じの人達が多い種族だ。

だが…。

「この氷室美香はそんな雪女のそれに当てはまらない。髪はワイルドなショートウルフで言動も実に粗暴。服装は和服だが比較的動きやすい野袴だ。悲しい事に大和撫子とは程遠い。」

 

「おい!!なに説明口調でバカにしてくれてんの!?」

いきなり氷室さんのツッコミが飛んできた。おっといけない、つい口に出ていたらしい。

 

「そもそも、あんたアタシにお世話になった身でしょ!ほら、敬って!!」

「いや、あれは単にお前が俺の担当だっただけでしょ…」

 

彼女の言うように、事実私は彼女にお世話になっている。この世界に来て転生者窓口に向かい、そこでこの世界の事を教えてもらったのがこの氷室さんという訳だ。その時偶然担当だったらしい。

だがそれとは別に私は彼女には特別にある事を教えてもらった事がある

 

「でも氷魔法教えたのはアタシでしょ!」

「まぁ、そこはちゃんと感謝してる」

「ならよし!!」

「…それでいいんだ」

 

そう、魔法だ。

この世界は魔法が普通に存在している。そしてその魔法、一般人でも基礎さえちゃんと教えてもらえば2~3種類のタイプの魔法は覚えられる。

 

私はこの氷室さんからこの世界の魔法に関する知識、そして彼女が得意としている氷魔法を教えてもらった。

これには理由は2つある。

1つは護身のため。

いくら自警団があると言ってもこの世界では自分の身は自分で護るのが基本だ。

先ほども言った通り、一般人でも魔法はいくらか使えるこの世界。勿論犯罪者も魔法を使う可能性は十分にある。

そのため魔法を持っておけば有事の際に非常に有利に物事が運ぶのだ。

まぁ、私は一時期お金稼ぎに自警団に参加していたのでそこで鍛えられたのだが。

 

そして、もう一つは…。

「で、何か買いに来たんじゃなかったっつや?」

「つや?あぁそうそう、冷凍マウス一応50くらいだって!」

「了解」

冷凍餌の管理のためだ。

世の中には冷凍保存しておかねばならない餌がある。それが冷凍餌だ。

先ほど注文の入った冷凍マウスもその餌の1つだ。主にヘビやトカゲ、フクロウの餌に使われる。

 

現在私はこの冷凍餌を冷凍魔法ともう一つ、別で習得した『結界作成魔法』を使ってこの冷凍餌を保存している。

結界魔法で外の空気等から遮断された空間を作り、そこに氷魔法で強力な冷気を注ぎ込む。簡単に言えば滅茶苦茶長く持つクーラーボックスのような物だ。

電気の通っていないこの世界、何か冷凍物を用意したい場合このようには魔法を応用し基本自作するしかないのだ。

ちなみに、この自作冷凍容器は私独自の物ではなく国の研究者が使っている魔法で作った冷凍容器を真似たものだ。勿論そちらのほうが断然性能は良い。

 

しばらく彼女ととりとめのない話をし、その自作冷凍容器から注文分のマウスを取り出し渡す。

「支払いは?」

「ツケといてだって!」

「はぁ…了解。」

また時間見つけて取り立てに行かねば。

 

「じゃ、またね!…あ!たまには自警団に顔出せよ~!」

「まぁ、そのうちね」

「じゃ!!」

ガチャン!!!

 

また扉が勢いよく開いて氷室さんは外に消えていった。

 

しかし、冷凍物の買い物のお使いに雪女を使うとは考えたなアイツめ…。

帰り道でも少しも溶けずに冷やされたまま持って帰れるじゃないか。