異世界餌屋5話:血を吸うコウモリと大和撫子(淫魔)

 

「ありがとうございましたー」

日暮れ間近、商品を買いに(あと雑談しに)来たお客を送り出す。

今日のお客はこれで最後だろう。

 

「さてと…」

店のイスから腰を上げ商品棚の1つへ向かう。

「頼まれてたのは…これか…えーと何個頼まれてたっけ」

そんな独り言をつぶやきながらとある商品をバッグに摘めていく。

 

そのバックを店の机の上に置き、店の掃除や買ってきた雑誌『のっぺらぼうは見た!!』などを読みながら時間を潰し日も完全に沈み夜になった頃。

「さて、行きますかね」

と言いつつ私は先ほどの商品を詰めたバックをもって自分の店を出た。

 

店の扉を開け、カギを閉めるそして最後に

「結界術式、発動」

そうつぶやき、店の入り口を結界で覆う。これは私が外出する際のいつものセキュリティ対策だ。

何か盗まれるような貴重な品が有る訳ではないのだが、かといって放っておいて店やその上の階にある私の部屋を荒らされるのは気分が悪い。普通の人ならカギを閉めるだけなのだが私は結界魔法も使えるのでせっかくなので使っている。

本当なら建物全体を結界包み込めれば良いのだがそんな技量は私には無い。

そういう方向に自分の魔法を伸ばそうとは思っていないしね。

 

戸締りが完了し、目的地まで歩く。

メインの大道りは魔法と『ある素材』を応用して開発されたランプなどでそれなりに明るい。

ただ、小道などは別だ。明かりも無いためかなり暗く、良くない奴らも結構いたりする。

私は自警団でバイトする時以外は面倒事はお断りなので普段そういう道は通らないしいたとしても無視する。

まぁ、誰かが絡まれていたり襲われていたりしたらさすがに話は別だけどね。自警団にちょっとは協力している身として。

 

だから、小道があったら確認しつつ歩いて数十分、目的の場所に着いた。

 

『barわふう』

 

その建物にはそう書かれた看板がある。

その看板がある建物の中に入ると扉に付けれられた鈴の音と

 

「あら、いらっしゃい」

という大人の、かつ柔らかい女性の声が耳に入る。

 

「どうもマスター、注文の品と飯食いに来たっす」

「あら、いつもありがとうね。お席にどうぞ~」

私も返事をし、また更にその女性が言葉を返し席に案内される。

 

この女性の名は『ローズ・ライラ』私はバーの店主という事でマスターと読んでいる

名前に反して濡れ羽黒のような黒く美しいロングヘアーと清楚という言葉がぴったりの顔立ち、ゆったりとしたスカートの洋服とイメージするなら洋服を着た日本の大和撫子といった感じだろうか。

 

ただ、普通の大和撫子とは違う所がある。それは背中とお尻辺りがら出る黒い翼と尻尾、そして頭にある角だ。

そう、彼女は淫魔…つまりサキュバスだ。

ただ、妖艶な感じは受けず、むしろ清楚な感じを強く受ける。

 

「さて、先に渡す物渡しときましょうかね。…お代は帰る時でいいわ。」

「あら、ありがとうございます。」

そう言いつつカウンターの席に座り、バッグから自分の店で詰めた商品を取り出し渡す。

その商品とは『血液を粉末にした物』だ。人間や動物の血液を乾燥させ、そのあと栄養素を足して粉末にしたものだ。

これは吸血コウモリ等のための餌として使われており、使う際はぬるま湯に溶かして与える。

今回この餌を持ってきたのは彼女のペット兼使い魔でもある吸血コウモリのための餌用だ。

 

ちなみにこの粉末血液、元の血液には人間の血液も使われているがこの血は殺人など重罪を犯した犯罪者から文字通り絞り取った血液だ。

この世界、重罪を犯した者には餌の材料にされたり、他には魔術や新兵器の実験台や何をされても許される奴隷にされたりとかなり容赦がない。

まぁ、それが抑止力に繋がってはいるのだが…。

 

そんなことをふと思い出していると

「ご注文は何に致します?」

マスターからオーダーを聞かれる。

 

そう、ここに来た最大の理由…それは勿論飯を食べる事だ。

バーなんてこの世界に数あれど、このバーに来た最大の理由それは…

 

「さば風竜田揚げとなにか小鉢を2つほど、あと白米もね」

 

和食がある事だ。