異世界餌屋6話:人食い植物と人食い植物(偽)

「すみませんが、その『植物』の餌は植物屋に行ってください」

「え…?」

私の店『魔飼料堂』に来たお客にうちではなくオススメの植物屋を教えてそちらのほうに行ってもらう。

 

「え?なんで帰らせたの?」

その瞬間、店に遊びに来ていた氷室さんが疑問を投げてきた。ちなみに彼女は今椅子ももたれかかりながら棒アイスを咥えている。

「何でって?」

「だって、あの人『人食い植物』のための餌を買いに来たんでしょ?売ってあげればいいじゃん」

「あぁ、あれは『植物』のほうだから餌はいらないんだよ」

「んあ?」

氷室さんが顔にハテナを浮かべながら間抜けな声を挙げる。

 

「人食い植物ってのは2種類いるんだよ。1つはさっきのお客さんが育てているようなちゃんとした植物、もう1つは人食い植物に『擬態した動物』なんだよ。前者は植物だから根があり動けない、後者は動き回って獲物を探してうろついてる。どちらも人を食べ、植物に似ているから一緒くたに『人食い植物』って呼ばれてるんだよ。」

 

「へー!…ん?じゃあ冒険者とかがよく出会う人食い植物って。」

「後者だね。」

 

このセカイの様々な場所を旅する冒険者達は当然、魔物やこのセカイ特有の生物『現象』などと戦うことになる。当然その戦う魔物の中には人食い植物も含まれているのだが、その人食い植物というのは動きまわっている動物タイプが大半なのだ。

 

「で、さっきも言った通り前者の植物のほうは根があるから地面から必要な栄養を吸収できる。ただ人食い植物の自生地っていうのは土の栄養が極端に少ない場合が多いから人なんかを襲うように進化してきたってわけ」

 

「え?じゃあやっぱり餌いるじゃん!」

 

「そこで野生と飼育下の違いが出てくるんだよ。飼育下なら栄養のある土で育てられるし、根から吸収させる事ができる栄養剤なんかも用意できるしな。餌あげなくてもそれで充分なんだよ」

そう、植物のほうは根という捕食以外の栄養摂取手段があるのだ。そしてそちらの方が栄養の吸収効率が良いらしい。

まぁ、人食い植物の人などを捕食する能力は厳しい環境下での苦肉の策での進化だからね。

 

「ふーん…あ、じゃあさ動物用の餌ってのはあるんだよね。どういう物なの?」

「こんなの、ほら」

私が店の棚からその餌を取り出して見せる。

「…ゼリーなんだ」

その餌は手のひらサイズの大きさもある濃い赤紫色をしたゼリーだ

「栄養分が濃縮された物なんだよ。ちなみに蓋を開けると…」

そう言いつつゼリーの蓋をペリペリと開ける。すると。

 

「くっっっさ!!!!!!」

店の中に氷室さんの絶叫が響く。そう、人食い植物の餌というのはとても臭いのである。

「肉を無理やりゼリーにしてるからねぇ。これでもだいぶ進化したんだけど…」

 

そう、これが植物のほうに餌を与えなくていいもう1つの理由だ。この人工飼料を含め餌を与えるとその餌自体の臭い+消化途中の臭いがものすごいのだ。